相毎モコ

400字で書くことを心がけ

豆月

2月のカレンダーが悲しい。
バレンタインデイというものが一面に押し出されていて、節分の影は跡形もない。
日本、チャチャチャ。
日本人というのは舶来ものに弱い、という話をあちこちで聞きますが、それは本当でマジだと思いますの。哀しいね、わびしいね、うるる。
うるる。というのは涙ぐむ表現で、実際に涙ぐんでいる訳ではない、そして涙ぐんでいる場合でもない。
節分がもっと大切にされてほしい。今はそう願う場合です。

だから、現実には起こり得ないんだけど、こういうことを想像し妄想し夢想し夢見る少女になってしまう。

・もし!節分とバレンタインデイが逆であったなら。
恵方巻きについては問題外なので考慮しない。

もし、バレンタインデイのようなものが先に日本にあり、節分のイベントがエウロパからきたものであったら。
人はチョコレートを室内室外ところかまわずに撒き散らし、家庭の平穏と災厄の鎮静を祈っていたはずである。
そこへ節分というヨーロピアンな文化がまいこむ。
舶来もの、新しいものだからみんな飛びつく。
結果、2月14日になると想いを秘めた女子生徒らが意中の男子生徒に豆を贈る。やがて豆によって結ばれたペアーが続出し、ぽやぽやとした淫靡な雰囲気・ムードが学校を包囲、なんとなく学内の風紀が乱れ、豆をもらえなかった男子生徒どもがジェラスのあまり授業ストを敢行、見かねた教師連中は「学校に豆持ってこないこと」を校則に追加、その教師連中の束縛に革命の要を感じ取ったカリスマーが生徒会長に立候補して「学校に豆を持ってくることを可能にする」というマニヘストを掲げ見事当選、またもや学内の風紀が乱れ・・・というループが待っている。

また、学校の外、たとえば会社なんかでは女性社員が義理豆だといって豆粒を男性社員に渡し、その一ヶ月後には女性社員は豆の御礼として行列のできるケーキ屋とかのスイーツを暗に要求、女性社員を敵に回すのもアレなので「たくよー、豆なんかもらってもよー、あれだよな、結局こういうことだよなー」とか言いながらケーキ屋に行列をなし、少ない小遣いから砂糖の塊みたいなものを誂えることになる。
また、日頃なにかとうざくて疎まれているおっさんなどは、ここぞとばかりにというか節分とバレンタインデイを都合よく混合させられて、女性社員から大量の豆を投げつけられ、可哀想なことにそれに対してもやはり御礼はせねばならず、このおっさんもケーキ屋に行列をなすことになる運命にある。

節分がこういう日だったら、今の世の中より良さそうだなあ、と思うが、そういえばチョコレートも元はカカオ豆という豆であり、男も女もマメになる機会が2月にはあって、2月という月はどうも豆に小さからぬ関係があるようです。
それに気づいて、少しだけひとりで嘆息をついて時計を見ると、0130。眠りの時間に遅れてしまって明日早起きできるかなあという恐怖に包まれて、布団に包まれる。