相毎モコ

400字で書くことを心がけ

読んだ 遠藤周作「愛情セミナー」

会社の不合理さに下唇を噛む日が続き、下唇がかさついてきた昨今。
いつ転勤辞令が下るか定かでなく、がために引っ越しを思うとソファの購入を躊躇してしまう昨今。
寒くなってきたので猫用のホットカーペットをえいこら言って買ってきたのに、猫がカーペットの上で温まろうという素振りを全く見せてくれない昨今。
繁華街にてしつこい客引きに「財布落としたんで」と言ったら「あっそ」と言われてしまった昨今。
地下鉄の中でうるさい子供がいて、隣の母親は全く注意をせず、その母親の無責任さを注意しようと思ったができずに勝手に悲しくなった昨今。


遠藤周作の「愛情セミナー」というエッセイを読んだ。すーばらしい本である。恋愛のようなものを経験した全ての老若男女に薦めたい、そんな気持ちでいっぱいだ。
恋には感情のほとばしりがつきもので、
結婚には感情のほとばしりはないらしい。
揺れ動くほとばしりがないからこそ、安定があり、倦怠期があるらしい。その安定ゆえの苦難をふたりで乗り越えられた先に、愛が存在するそうだ。
恋とは誰にでも自然に行える簡単な行為一般であり、愛とはめっちゃ難しい行為なんだとのこと。
そして、難しいこと簡単でないことに果敢に取り組むのが、日本男児であると遠藤周作は語る。ゆえに男よ、簡単な恋でなく困難な愛をせよ、てな事がはじめの方にあった。
そんなに言い切ってもいいんですか、と思う。それなら日本女児はどうなんですか、と問いたくなるのが人情だろう。

でもまあ男に関することは転じて女にも関することだと思うので、そういうわけで老若男女に一読を薦めたい気持ちでいっぱいなのです。