相毎モコ

400字で書くことを心がけ

赤信号歩行主義者の光明

赤信号、みんなで渡れば、こわくない。
という標語が、いつの時代かどこかしらであったような気がする今日この頃。確かにみんなで赤信号を渡ったら、ドライバア(ドライバアって乾燥婆とも訳せるね)は止まらざるをえず、通行人は無敵である。

でもたまに、じき変わりそうな赤信号で1人先んじて歩き出す人がいるが、あれは何なのだろう。

効率重視型の人間なのか。車こねえのに止まってるなんて意味ないよ、あほくさいよ、非効率極まりないよ。みたいな感じなのだろうか。
しかしそういう人に言ってみたいのは、それはあまり効率的じゃないんじゃないかねえ、ということである。先んじて歩き出していてもその差は5秒くらいだし、赤信号で轢かれるのと青信号で轢かれるのとでは万が一轢かれた時の責任が変わってくるだろう。

あるいは効率だけではなく、優越をも感じたいのかもしれぬ。みんな止まってるのに、俺、歩いてる。特異な存在、つまりはユニーク。くー。やめらんねえ、これだよこれ、俺はナンバーワンにしてオンリーワンだよね。くー。ということだろうか。

あるいは。微妙な赤信号の無視という小さな法律の侵犯、そのことでプチ・アナーキズムに浸り、いい加減な国家に対する反抗の実績を積み上げているのでは、という見方もある。小石のような犯行・反抗で、ひとつびとつは小さい。が、ちりも積もればうんたらら、という諺もある。とすると考えようによっては、このタイプはコツコツと人知れぬ努力を惜しまない奴、諺を気にするおばあちゃん子みたいな奴ということになる。なんだか応援したくなってしまう。

それにしても赤信号、みんなで渡れば、こわくないという標語は、めちゃくちゃ怖い。みんなでやれば何でもいいじゃん、というこの思想は悪いものが渦巻く。それに比べれば、赤信号をひとりで勝手に渡る人というのは、なんだかかわいいものだよねえ。