相毎モコ

400字で書くことを心がけ

靴底の観賞の感傷

普段あまり注意して見ることはないが、靴の裏を眺めるとなんともいえない気持になる。自分の気づかぬうちに、靴が勝手にすり減っているのよね。
地面やなんかに擦れて摩滅していったのだろうけれども、これの意味するところはそのへんの地面には色々な人の靴の底が粉末・粒子になって落ちている、ということではないだろうか。
簡単に算数で考えると、新品の靴の底を100・履きふるした靴の底を50とすれば、履き続ける間に50に相当する靴底が減ったことになる。とても細かく分かれて。

別にこれを回収する人もいないから、この50は地面に残されたままで、あるものは風に舞い不分明な塵芥となり、あるものは雨に流されて荒川の泥土と化す。

もしそれを見つけられたところで、もはや靴の底とは認識できないし、「これは靴の底だった粒子でありますね」などと判別できるものでもないだろうが、確かにある一時期、誰かの靴底はそれで構成されていた。

こう考えて靴の底を眺めると、ミクロな感傷がじわりとくる。