相毎モコ

400字で書くことを心がけ

恐怖 子どもと猫ダッシュ

外出中、子どもを見かけることが多々あり、「少子高齢化です。なんておっさんは言うけれど、なかなかどうして、結構いるじゃないですか、少子」とか思ってへらへら歩いていると、正直いって危ない。
子どもにぶつかりそうになるのである。子どもはなぜかいつも走っている。何が彼をそうさせるのか謎だが、とにかく走る。しかも蝶々を追いかける時のように何かに夢中になって走るので、周りの障害物(私とか電柱とか)に気づかず、それらとぶつかりそうになり、たまにぶつかる。
子どもを見かけたら、「ああ、走ってくるな、危ないな、怖いな」と思うにしくはない。

それから、猫もよく走る。
何が彼女をそうさせるのかまたもや謎だが、とにかく家の中を走り回る。
しかもダッシュの際、彼女は律儀に爪を立ててくれるので、おかげで賃貸のアパートのフローリングの表面の傷の数は増えていく一方だ。
はじめのうちは「退去の時にお金がかかったりするので、やめてくれんかね」と訴えたりしていた。しかし彼女の耳に届くことはない。フローリングは満身創痍。ここに至って、私は「あきらめ」というものを学んだ。

しかし学んだことは次々と忘れていくため、気づけばあきらめられない自分がいる。
どうしたら猫ダッシュがなくなるというのか。

動物が足早に駆ける時。それは身の危険を感じた時ではないか。
「素早い動きに猫は警戒心を持ちます。」という文章も見た記憶がある。一理ある。
ということは、緩慢な動きをすればいいということだろう。

緩慢な動きといえば、ナマケモノかカタツムリかオバアチャン、といったところ。これらの模倣をすれば、緩慢な動きとなり、猫の警戒心が解かれ、猫ダッシュがなくなり、平穏なる日々が戻ってくる。
模倣するのに一番手っ取り早いのは、ずばりお婆ちゃんである。選択肢の中で一番見慣れているからだ。

というわけで、お婆ちゃんのようにヨボヨボと部屋の中をうろついた。
猫は「なんだ、こいつ」みたいな目で一瞥をくれ、どこかに走り去った。
お婆ちゃんの模倣が未熟なのが原因と思われる。不審者と思われたのかもしれない。無念だが方向性は間違っていないだろう。向後の精進が肝要である。