相毎モコ

400字で書くことを心がけ

時には時計の針のように

ピラミッドやシュメール人、ヴォイニッチ手記、徳川埋蔵金エトセトラ。
世界にはいまだ解明されていない謎が数多く残っているが、「寝ていると布団が後退してゆく現象」もまた依然として謎である。

寝ている間にいったい何が起こっているのか。寝返りのせいなのか、はたまた靴屋の童話に出てくるような小人の仕業なのか。もし小人の仕業だとしたら、もっと役に立つことをしてほしい。掃除するとか、絨毯を編むとかいろいろあるだろう。

そういえば、大学の寮にいた頃、寝ている間なにが起こっているのか謎な人物がいた。
その人は寝ている間に、身体が時計の針のように動いているのである。腹を中心として、ぐるぐる回っていくのだ。
たとえば、8時間寝ているとすると、2時間目で3時の方角、4時間目で6時の方角、6時間目で9時の方角、8時間目で元の12時の方角に収まっている、という塩梅である。
動いている瞬間を目撃した、という人はついぞ現れなかったが、確かにその人の頭の位置は睡眠時間に比例して移動していた。

その人は今、郵便局で配達員をやっている。
郵便屋さんと一口にいっても、色々な人がいるのだろうと思われる秋の夜。