相毎モコ

400字で書くことを心がけ

働きのネコ 起床七変化

目に入れても痛くない。おじいさんやおばあさんが、孫に向かって言う。

可愛さが極限に達していることを表現する言葉であるが、いくら可愛くても目に入れたら痛いよ、正味。しかしそれは無粋というもので、本当に愛をしていれば痛くないのだろうか。
ていうか、愛をするってなんだ。愛する、という言い方もあるが、愛をする、という言い方とはややニュアンスが異なる。そもそも愛とはなになのか。

というのは割とどうでもいいことだが、そういえば可愛さ・愛情を表す言い回しに「食べちゃいたいくらい可愛い」というのもある。あれもやや過言ではないのか。
共通するのは、愛でたきものを体内に取り入れるという行為である。
眼中だろうと、胃腸だろうと、愛するものを体内に取り入れる。
ここに至って思わずにいられぬのは、ずばりセックスしかないだろう。色々な背景がありつつも、セックスが愛ゆえの行為だと称されることに合点するような気がしなくもないですよねえ。

 

ということを眠り猫を見ながら考えていると、猫が目を覚ました。

漫画とかで「う〜ん」とか言って起きぬけに身体を伸ばす人はあまり見たことないが、猫にいたっては毎度欠かさずに伸びる。律儀な生き物ですよ。猫の一番かわいらしい瞬間は、この起きぬけにある。
猫伸びは大まかに2つのセクションに分かれており、尻を高く上げ海老のように反る→逆に背を丸め爪先で立ってトロイの木馬のようになる、という動きを数回繰り返す。これが猫伸びの概要だ。

トロイの木馬になっている時の神妙かつ真剣な顔は、めちゃ面白いアンドかわいらしい。目に入れたり、胃腸にしまいたくなるほどだが、海老versionもなかなかである。

海老versionの猫は片前足ずつ伸びることがあるが、その時の猫の足先、というか指がかぱっと開く。普段、猫の足先・指は閉じてまとまっている感じだが、この時ばかりは開くように神様が猫を造る段階で設計したのかもしれぬ、その様はカエルの手みたいになっていて、普段見れないもんだから面白い。そしてかわいらしい。

 

また、睡眠中の目が「」の形をしていたり、豚が手足をくくられ「今から焼かれるんですよ、俗にいう豚の丸焼きになるんですよ」みたいな格好で寝ていることもあり、実に愉快なやつである。
猫は寝てばかりでひとつも役に立たぬ、という話を聞くことがあり頷かざるを得ない。確かに寝てばかりで自分のキャットフード代も捻出しないのらくら者ではある。
だが、寝ている間もこうして愉快さを届け、眠りから戻ってはかわいらしさを放つ。とすると、しっかりと仕事は果たしているようにも思え、やはり律儀な生き物だといえるかもしれない。

 

という話を今度、道で迷子になって泣いている幼児とかがいたら気紛れに話してやろうと思う。