相毎モコ

400字で書くことを心がけ

寒げなメイド、秋葉原、膀胱炎のときめき

完全に新年は明けました。おめでポン。
エスさんが生まれてから2019回目の年ですが、耶蘇でもなんでもない私は特にこのことに関しては感慨もなく、ただ世間がめでたいめでたいとめでたがっているのでなんとなくめでたさを感じている、そんな意思も主張もない流木のような一年をまた過ごすことになるでしょう。

しかし正味、そんなことはどうでもよくて問題は古本屋で買った本についてなのです。
今日は仕事中にもかかわらず、ブックオフに行きました。秋葉原ブックオフです。道々に立っているメイドを申し訳ないが無視して、ブックオフ。今日の東京は寒かった、風が吹いて。多分北風。冷たい風にさらされながらも「ご主人様、ご主人様」と呼びかけるメイドを他人のように無視してしまった。2019、初無視である。っていうか、他人だから無視するのは当たり前だよね、と言う人があるかもしれないが、確かにそうで気をもむこともないのかもしれないけれども、とにかく今日は東京のくせに寒かったので寒風に吹かれるメイドに同情心のようなものを持ってしまった。エールを送ることくらいしか他人の私にはできない、頑張れメイド、ビバメイド。

そんな感じでブックオフに行き、文庫本コーナー。買ったのは遠藤周作の「生き上手 死に上手」と題された本。落ち着いて考えてみると、こんなお世辞にも明るい感じがしないタイトルの本が、27才の月給取りが読むような本だろうか。会社の人に知れたら、という懸念が今生まれる。そんな生死について考える暇があったら数字持ってきてください、と部長は言うだろう。蓋し正論である。月給取りは月給を上げること、すなはち業績・数字をあげることだけ考えていればよいのかもしれない。窒息しそうな生の活。

とにかくこの遠藤周作の本、買って気付いたが、中にプリントが入っていた。気付いたのは日比谷線のホーム。四つ折りになったプリントをひらくと、そこには「あなたは膀胱炎です」という見出し。いわゆる膀胱炎宣告プリントである。
この「生き上手 死に上手」を売った人は読んだ人は、膀胱炎だったのだ。本の栞として膀胱炎宣告プリントを挟んでいたのだろう。

古本の中にへんてこな栞が挟んであることは意外とある。
人物のスケッチ、携帯電話の番号、いつかの献立、トゥードゥーリスト、写真などが今までにあった。
思わぬ形で、一度たりとも会ったことのない人間との時空を超えた接点が生まれる。これは何ともいえない濃淡のある感慨が味わえる。少し気味悪くもあり、楽しくもあり。海辺でボトルメッセージを拾ったときというのは、こんな感じなのだろうか。草野マサムネ的にいえば、「知らない街から手紙が届くようなときめき」。
ときめきは嬉しい。

そんなわけでブックオフが好きです。