相毎モコ

400字で書くことを心がけ

ガスナキ生活

ガス!
それは気体であり、肉眼に見えぬものであり、気体のようなものであり、爆発するものであり、嗅覚を刺激するものであり、危なそうなものであるが、万物の霊長である人間様の御生活に今やお欠かしのできないシロモノだ!
給湯器!温風器!焜炉に浮かぶ風船まで、ありとあらゆる文明の利器はガスを利用しているのであり、ガスは利用されているのだ。


そして、自分の生活、これを考えると、ガスがねえ!
というのは世の中には込み入った事情というものがあって、この場合もこの事情があるのだが、とにかくガスがない生活。
一言でいうと、不便だ!
まず、ちょいとそうめんを茹でて空いた腹部を満たしたくなる、これが庶民的日本人の夏通念だが、そうめんを茹でることすらできない。「そうめんを茹でることすらできない」という日本語は二度と使えないだろうと思うのでもう一度書くが、そうめんを茹でることすらできない。できないのだ、そうめんを茹でることが。

他にも色々と困ることが満載だ。

と思って困っていることを探したが、なかった。いや、困っていることはたくさんあるが、それらはガスには関係のないことだった。なにが満載だ。


「河原のアパラ」という町田康の書いた話があったが、あれは確かガスを使えない男が主人公だったと記憶している。
ガス屋のおっさんの「あぁぶねえよ」という一部の台詞も記憶している。彼がその後、ガスボンベを撤去してしまったのだった。
「みんなのうどん」といううどん屋で同僚の天田はまこが猿を買ってきて、最終的に猿は湯のはられた鍋に落ちて「きぃっ」と鳴いて沈んでいったシーンも覚えている。あのシーンが自分は一番鮮明にイメージできる。

町田康の話は、マゾヒズムが爆破して気持ち的な気分的な心情的な爽快感、浄化、カタルシスがあるから、ゆえに生のぬめりがあって、とても好きだ。


ガスがないので毎日水を浴びているが、水でも意外とやっていけるものです。